第96回装苑賞 受賞 大下彩楓さんのポートフォリオ公開!
第96回装苑賞を受賞した大下彩楓さんのポートフォリオを、ポイントとともに紹介します。
ポートフォリオって何?
作品のテーマやコンセプト、デザイン画、素材のサンプル、過去の制作物や自己紹介などをわかりやすく1冊にまとめたファイル。デザイナーがどんな思いや意図をもって作品を作ろうとしているのかを、審査員へ伝えるために作るプレゼンテーション用アイテムです。必須事項さえ押さえれば、ファイルの種類やサイズ、ページ数などはデザイナーの自由。まずはポートフォリオ審査を通過するために、自己流でもいいので、自由にポートフォリオを作ってみよう。
大下さんのポートフォリオの表紙は、様々な音を表現した線や立体的な切り込みの加工が施されているため、作品のテーマが感じられる。
〔重要〕:必要事項を必ず明記しよう。
ポートフォリオを審査員に確実に届けるために、応募要項に記されている必要事項の明記を忘れずに。
希望する審査員名、テーマ、氏名、年齢、職業(学生は学校名)、住所、電話番号、メールアドレスを必ず明記してください。
※1次審査通過のお知らせは、電話連絡となります。
POINT 1:まずはテーマを考えよう。
まず初めに、自分がどんな作品を作りたいのかを考えて、テーマとなる言葉を設定します。
身の回りの出来事や最近気になっているカルチャー、大好きな趣味や尊敬するクリエイターの作品など、様々なモチーフを自分の周辺から拾い集めて、テーマにしてください。
POINT 2:次にコンセプトを練ってみよう。
テーマが固まってきたら、なぜそのテーマに至ったのか、その理由や自身の考えをコンセプトとして言葉にしてみます。文章が苦手な人は、モチーフの写真や関連する素材を集めたコラージュを添えてみるのもいいでしょう。
「音戯(おとぎ)」をテーマにした大下さん。日常で聞こえている音は、様々なものから発せられ、重なっているのだと感じ、目には見えない音が空間を漂い、戯れるように人の鼓膜に触れる様子を服で表現しようと考えた。
POINT 3:イメージをまとめてみよう。
テーマをもとに、そこから浮かんでくるイメージを写真やイラストなどを使ってまとめてみます。頭の中にある要素をビジュアルとして整理して見せることで、作品の方向性や伝えたいことがよりわかりやすくなります。
振動が空気や水を介して音ととなり耳に届くことから、自らが想像する音の形に近いイラストや写真をコラージュ。軽いため風に揺られれば形が変わり、透けて遠くの声も聞こえるなど、多様な音の形の可能性を模索している。
POINT 4:テーマをデザインに昇華してみよう。
次にデザイン画を描いてみます。どんな服を作りたいのか、そのデザイン画を実際に形にすることができるのか、の2点が重要なポイント。装苑賞は最終的に3体のミニコレクションでの発表となるので、必ず3枚以上のデザイン画が必要です。
音が層のように重なり、輪郭を変えながら漂う姿をデザイン画に落とし込んだ。色が混ざると無彩色に近づくように、音も白と黒のみで表現。繊細な線と柔らかなグラデーションで、まるで音が見えているかのような錯覚を覚える。
POINT 5:素材を考えてみよう。
デザイン画を描いたら、どんな素材で服にしたいのかを考えます。素材サンプルはデザイン画がどんな服になるのか、見る人の想像を膨らませるサポートアイテム。あくまでサンプルなので、実物制作の際に素材を変更することは可能です。
着用した際に生地が軽やかに揺れ動くことをイメージし、チュールの上から刺繍糸で、見えない音の模様を描いている。音の輪郭や層を表現するため、グラデーションの形や濃度が変わるよう、生地のカットや重ね方を工夫した。
POINT 6:余裕があれば、プラスαの要素を追加してみよう。
●関連の資料を集め、テーマのモチーフを深く考察した、リサーチのページを入れる
●デザイン画を実物にするための研究過程を載せたページを入れる
●伝わりやすいページネーションを考えてみる
●印象的なレイアウトに挑戦してみる
ポートフォリオは起承転結のある一冊の本と同じです。初めてトライする場合は、1~5の作り方のとおりでも大丈夫。ポートフォリオ経験者や時間に余裕のある方は、ぜひいろいろな作り方を試してみてください。プロのように完璧である必要はありません。
デザイナーの熱い思いが込められていれば、審査員に思いは通じます。
大下彩楓
2002年生まれ、岐阜県出身。2020年、国際ファッション専門職大学 国際ファッション学部 名古屋ファッションクリエイション・ビジネス学科入学。現在、同大学 三年次 在学中。
※第96回装苑賞公開審査会の様子はこちら
photographs:Josui, Jun Tsuchiya(all B.P.B.)
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