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第95回装苑賞 佳作2位を受賞した島谷達廣さんのポートフォリオを、ポイントとともに紹介します。

ポートフォリオって何?

作品のテーマやコンセプト、デザイン画、素材のサンプル、過去の制作物や自己紹介などをわかりやすく1冊にまとめたファイル。デザイナーがどんな思いや意図をもって作品を作ろうとしているのかを、審査員へ伝えるために作るプレゼンテーション用アイテムです。必須事項さえ押さえれば、ファイルの種類やサイズ、ページ数などはデザイナーの自由。まずはポートフォリオ審査を通過するために、自己流でもいいので、自由にポートフォリオを作ってみよう。

島谷さんのポートフォリオは表紙の赤色と抽象的な絵が印象的。テーマの文字や糸で綴じられた製本の仕様からも、細やかな工夫が感じられる。

〔重要〕:必要事項を必ず明記しよう。
ポートフォリオを審査員に確実に届けるために、応募要項に記されている必要事項の明記を忘れずに。
希望する審査員名、テーマ、氏名、年齢、職業(学生は学校名)、住所、電話番号、メールアドレスを必ず明記してください。
※1次審査通過のお知らせは、電話連絡となります。

POINT 1:まずはテーマを考えよう。
まず初めに、自分がどんな作品を作りたいのかを考えて、テーマとなる言葉を設定します。
身の回りの出来事や最近気になっているカルチャー、大好きな趣味や尊敬するクリエイターの作品など、様々なモチーフを自分の周辺から拾い集めて、テーマにしてください。

POINT 2:次にコンセプトを練ってみよう。
テーマが固まってきたら、なぜそのテーマに至ったのか、その理由や自身の考えをコンセプトとして言葉にしてみます。文章が苦手な人は、モチーフの写真や関連する素材を集めたコラージュを添えてみるのもいいでしょう。

「SEX感の拡張」をテーマにした島谷さん。何かを美しいと感じるとき、そこにサブリミナル的に人体のカーブがあったという。このカーブを理解し、既存の人体の美しさを拡張することでSEX感のある洋服になると考えた。

POINT 3:イメージをまとめてみよう。
テーマをもとに、そこから浮かんでくるイメージを写真やイラストなどを使ってまとめてみます。頭の中にある要素をビジュアルとして整理して見せることで、作品の方向性や伝えたいことがよりわかりやすくなります。

人体の持つ曲線の美しさをさらに高めるため、自身が美しさを感じた手塚治虫の「火の鳥」をモチーフとし、人体と鳥の骨格を比べた。様々な角度から分析し、造形の理解を深めることで、理想の形を追求した。

POINT 4:テーマをデザインに昇華してみよう。
次にデザイン画を描いてみます。どんな服を作りたいのか、そのデザイン画を実際に形にすることができるのか、の2点が重要なポイント。装苑賞は最終的に3体のミニコレクションでの発表となるので、必ず3枚以上のデザイン画が必要です。

「トルソー」「肩」「羽」と、異なった部分にフォーカスを当てて拡張を表現し、人体の曲線の柔らかさが伝わるようなデザイン画になっている。色や素材は変えずに、造形の違いでテーマを表現していることが伝わる。

POINT 5:素材を考えてみよう。
デザイン画を描いたら、どんな素材で服にしたいのかを考えます。素材サンプルはデザイン画がどんな服になるのか、見る人の想像を膨らませるサポートアイテム。あくまでサンプルなので、実物制作の際に素材を変更することは可能です。

サンプルでは、羊毛を紡いでできた糸の編み方によって、同じ素材でも異なる形やボリューム感を出す手法に着目。実物製作では、人体に沿った表現をするためにフェルト化させて表面を滑らかにし、編みとの密度の違いも出せる、その素材の自由さで表現している。

POINT 6:余裕があれば、プラスαの要素を追加してみよう。
●関連の資料を集め、テーマのモチーフを深く考察した、リサーチのページを入れる
●デザイン画を実物にするための研究過程を載せたページを入れる
●伝わりやすいページネーションを考えてみる
●印象的なレイアウトに挑戦してみる

ポートフォリオは起承転結のある一冊の本と同じです。初めてトライする場合は、1~5の作り方のとおりでも大丈夫。ポートフォリオ経験者や時間に余裕のある方は、ぜひいろいろな作り方を試してみてください。プロのように完璧である必要はありません。
デザイナーの熱い思いが込められていれば、審査員に思いは通じます。

島谷達廣
1997年生まれ、北海道出身。
2016年、武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科に入学し、
昨年、同大学同学科を卒業。現在、同大学同学科の助手を務める傍ら、衣装や舞台美術を手がけている。

※第95回装苑賞公開審査会の様子はこちら

photographs:Josui, Jun Tsuchiya(all B.P.B.)

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